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実は、「スモールM&A」の明確な定義はありません。

一方で経産省/中企庁では、よく似た言葉として「中小M&A」と言う用語を使っています。
この「中小M&A」の定義は後述しますが、要は、M&Aを実施する「主体(当事者)」を念頭においた概念と言えます。
しかし、実際には、大企業が中小企業をM&Aするケースも少なくなく、その逆も少数ですがあります。つまり、一口に「中小M&A」と謂っても、その形態・譲渡価格は様々です。

一方、「スモールM&A」と言う言葉も色々使われていますが、ニュアンスとしては「小規模なM&A」つまり「金額規模」にフォーカスしているように感じます。
例えば–売上約1億円以下の先の買収、譲渡価格約1億円以下のM&A …と言う具合に。
そこで、このブログでは、割り切って、主に「譲渡価格が1億円程度以下のM&A」として、この用語を使用します。

スモールM&Aとは?

・今や日本のM&Aの大半はスモールM&A?

2022年(暦年ベース)の「M&A件数」として、4303件と言う数字が MARR Online から発表されています。
(MARR Onlinは(株)レコフのブランド名で、同社は継続的にM&A件数を発表しています。なお、最新の数字は後記「リンク先」を参照ください)
一方、中小企業庁は自らの「M&A支援機関登録制度」に登録している支援事業者の報告の集計を公表しています。2022年度(4月から翌年3月まで)の「中小M&A件数」は譲渡側ベースで4036件です。
(中小M&Aの定義:資本金1億円以下の法人または個人事業主が当事者のM&A)
「暦年」と「年度」の違いはありますが、両者の数字を表面的に単純比較すれば、日本のM&Aの大半は、実は中小M&Aであると言えそうです。そして中小M&Aの多くがスモールM&Aであることも紛れもない事実です。
これらの数字はあくまでアンケート的に集計されたものや適時開示情報等の集計ですので、整合性は高くありませんし、また業界全体の数字を正確に表している訳でもありませんが、ある程度の傾向自体は大雑把には捉えていると考えられます。

🔻 それぞれの数字については下記リンク先を参照ください。

▶ MARR Online  2022年のM&A回顧

▶ 中小中小企業庁 M&A支援機関登録制度 中小M&Aの集計結果

▶ PR TIMES 2024年9月M&Aレポート

フツーのM&AとスモールM&Aの違い

本ブログでは「譲渡価格の金額規模」でフツーのM&AとスモールM&Aを区分して、話を進めています。
そもそも、譲渡価格の計算方法自体も色々ですが、基本的にはそれらは企業の純資産や収益力に依存します。
畢竟、「スモールM&A」は小規模な企業のM&Aに他なりません。
こうして、金額規模で両者を区分すると、自ずとその相違点が明確になります。
(下記項目は譲渡対象企業ベース。
 右側がスモールM&Aの場合、左側がフツーのM&Aの場合)

1.案件検討主体      企業内専門部署(組織、チーム) ↔ 社長(担当者個人)
2.事業計画        大半が策定済  ↔ そもそも存在しない
3.内外の契約関係     複雑多種類  ↔ 僅少
4.勘定科目、残高      多数、多額  ↔ 少数、少額

つまり、スモールM&Aは、よりシンプルな企業内容である為、各種DDが相対的に容易になると言えます。
このことはM&A検討の時間が短縮出来ることを意味しています。     

スモールM&Aは何故増加している?

・スモールM&Aは増えているのか?

(上は、中小企業庁の資料。詳細は後記リンク参照)

中小M&AあるいはスモールM&Aの正確・厳密なデータは存在しませんし、先の中小企業庁の統計も始まったばかりです。
中小M&A/スモールM&Aの総数を示すものではありませんが、一つの参考データとして上記「事業承継・引継ぎ支援センター」での取扱件数の増加基調が続いている事実があり、その殆どが中小M&A(≒スモールM&A)と考えられます。具体的なデータは後記リンクを参照ください。
因みに、上記センターは全国都道府県に設置されている公的事業承継支援機関です。
ここからは、中小企業のM&Aの増加は事業承継問題の解決手法として国がM&A推進に積極的に注力していることが一因であることが伺えます。

・個人がスモールM&Aを牽引

スモールM&Aの増加、特にその内訳についての正確な統計はないのですが、私の経験や調査した限りでは、スモールM&Aは、必ずしも事業承継案件ばかりではないと感じています。
ここで注目すべきは、近時のM&Aマッチングサイトの大躍進です。
マッチングサイトのビジネス・モデルは、大手M&A専門業者のように「自ら主体的にM&Aの仲介(あるいはフィナンシャル・アドバイス)及びM&A成約に向け活動し、報酬を目指す」~のではなく、基本的にはM&Aと言う「出会いの場所」をネット上で提供し、交渉自体は当事者に原則として委ね、そのショバ代を請求すると言うものです。

例えば、業界最大手BATONZの例で見ると、開業以来6年で通算5千件弱、2023年では1.9千件弱の成約実績を誇っています。先の中小企業庁やレコフの数字と単純比較すると1社で半分近い実績を上げたことになります。
更に言えば、単純な件数比較で言えば、事業承継・引継ぎセンターの実績を1社で超えていることになります。

では、増加するスモールM&Aの担い手は誰なのでしょうか?
BATONZが公表している数字(R6/11/15閲覧)によると、売り手は業種や地域による偏りは相対的には少なく、
譲渡希望金額1億円以下が8割強、成約価格 1億円以下が9割以上。
因みにM&A対象先の売上は1億円未満が8割弱です。
いずれにせよ、殆どがスモールM&Aであることが分ります。
では、一体、誰が買っていると言うのでしょう?
買い手の法個人分類では、法人が7割弱に対し、なんと純粋個人が2割以上で、1割弱の個人事業主を越えているのです。
つまり、昨今のスモールM&A市場への純粋個人の進出が、当該市場拡大の一因と考えられます。
サラリーマンの兼業が広く認められてきたこと、あるいは定年予定者の第2の人生設計として、更に言えば、脱サラして起業を目指す人たちの台頭がそこにはあるのです。

「M&Aはリスクが高い、こわい」と食わず嫌い的に敬遠されていた従来から見れば、雲泥の差です。
また、「好きな仕事で独立開業」を目指すのではなく、「初めに開業・創業ありき」で、その業種は選択肢の一つに過ぎないと考える人達が増えてきている≒時代は確実に変わりつつあることを、これらの買い手候補者と接していると肌で感じます。

と、言うことは、この買い手達は、次の瞬間には売り手にもなる可能性が高いのです。
「ある程度、ビジネスを成功させれば売って、また新たなビジネスを探す」「このビジネスは実際にやってみるとチョット違ったな」あるいは「失敗したので撤退=売り払いたい」と彼らは考えるのです。
かつて日米の起業家の相違点として、
「日本はIPOを一つのゴール(エグジット~出口)として捉える」ものが多く、
「米国ではM&Aでの高額売却を目指す」と謂われていました。
真相やデータにつき、定かなものはありませんが、その伝手で行けば、米国型の起業家が増えつつあるのかも知れません。

実は、新しい日本のビジネススタイルが、今、産まれつつあるのかも知れません…


🔻 データの詳細は下記リンクを参照ください。


▶ 中小企業庁 検討会資料

▶ 数字で見るバトンズ

レーマン方式とスモールM&A

・レーマン方式(Lehman Formula 上の表参照。名称の由来には諸説あり、詳細は後記リンク参照)は支援事業者の報酬体系として、デファクト・スタンダード化しているものです。
 しかし、そもそもレーマン方式は、スモールM&Aに適しているのでしょうか?

スモールM&A市場が、従来は、今一活況でなかった理由の一つが大手業者による「高過ぎる報酬」にあったことも、また疑いようのない事実でしょう。
多くのM&A支援事業者が成功報酬の料率表として採用している「レーマン方式」ですが、実際の報酬価格となると業者間でバラツキが出て来ます。

留意すべき点は2つです。
1つは、料率は同じでも、報酬の基準額が異なることです。
基準額は「買収価格(株価)」「企業価値」「移動総資産」等業者によって違っています。
当該業者がどの方式を採用しているか要確認です。
もう1つは、最低報酬価格(ミニマム・チャージ)の存在です。上記による計算の結果が、この最低報酬価格を下回る場合は、実際の報酬額としては最低報酬価格の方が適用されます。
仲介業務には当該企業の規模に関わらず、最低限度の支援活動・業務・作業が発生します。
「それらを賄うもの」というのが、最低報酬価格の理論的根拠ですが、その金額は業者により実に様々です。
メガバンクや大手の一角は2000万円を徴求します。この金額を筆頭に、1000万円、500万円などと業者によって多岐に分かれます。

スモールM&Aの譲渡価格は、文字通り、せいぜい1億円程度ですので、多くの場合、レーマン方式での料率は5%になります。
仮に株価による譲渡額1000万円、5%料率ですと、報酬額は計算上50万円になります。
が、大手ですと、先の「最低報酬価格」が適用される結果、最高で2000万円を請求されることも起こり得ます。
流石に、基本的にお金が潤沢にある訳ではない中小企業にとっては、譲渡価格を遥かに超える手数料は辛いですね。

しかし、この最低報酬価格も徐々に引き下げられつつあります。

尤も、多くの高給取りの社員を抱え、他にも弁護士や税理士等プロを様々な形で契約・提携している大手にとっては、そう簡単に引き下げ合戦に手を出す訳にもいかない事情があります。
現実的に考えれば、彼らには、より高い報酬が得られる案件が他にあるのですから、採算的に効率の悪いスモールM&Aは優先順位が低くなります。必然的に必要以上のダンピングへの動機付けは薄くなるでしょう。
逆に大手に大口案件を独占されている中小事業者の一部はダンピングに走っているようです。

しかし、やはり、昨今の報酬価格下落基調の決定打はマッチングサイトの登場でしょう。
この登場によりM&A希望者は業者に高い報酬を払うことなく自ら交渉すると言う味を占めてしまったのです。

マッチングサイトの利用者、特に個人層と話していると、「無駄なカネはビタ一文払いたくない」と言う強い意向を感じることが多いのも事実です。

彼らにしてみれば、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)に支払う手数料など、おそらくムダな報酬の最たるものなのでしょう。
彼らの中には金融商品やマンション投資などと同じ感覚で企業を購入=M&Aしている方もいらっしゃいました。
当然のことながら、企業経営はある程度パターン化されているマンション経営と比べて格段に複雑で予測困難、極めて難度が高いものです。
また、決算や各種契約関係、人事・労務問題等M&A前に検証・検討すべきことも山積みです。
いかにスモールと言えど、企業である以上、それなりの業歴があり、顧客・関係先・従業員を有している以上、最低限度のチェックの必要はあります。
プロのプロたる所以は、ネットでは容易には入手出来ない、その専門的な経験(修羅場もタップリ)に裏付けられた知見・ノウハウ・スキルですので、活用しないことこそ損だと私は思っています。
自己責任の世界ですから、「買ってから後悔」しても遅いのですが、昨今の買い手希望者は自信満々のご仁が多いのか、どうも、自力解決指向が強い傾向がありますね。頼もしいやら、危なっかしいやら…


🔻 リンク先

▶ 中小企業庁M&A登録支援機関制度 集計結果(報酬) 

餅は餅屋
 ~スモールM&A専業事業者の存在

では、マッチングサイトの利用者を含め、これら新興勢力であるスモールM&Aの売り手・買い手を支援するのは誰が適切なのでしょう?

・フツーのM&Aは大手M&A専門業者に、
 スモールM&Aはより小規模なスモールM&A専門支援事業者に。


餅は餅屋です。
スモールM&Aの検討には、逆説的ですが、M&Aの専門家と言うより、企業経営の専門家の視点の方が有効なのではないか、と私は感じています。
買い手にとって、事前の企業自体の検証・検討は不可避で、プロのスキルを使って=カネをかけることで、解決することは、無用な経費どころか賢い選択ではないでしょうか?
また、フツーのM&Aの検討と比べれば、DD(デューデリジェンス)作業もシンプルですので手間も時間の少なくて済みます。
その分、単なるダンピングではなく、割安な適正価格を顧客(買い手)に提示することが可能になります。
勿論、スモールM&Aの売り先の大半が事業計画もなければ、会計監査も受けていないでしょうから、意図的か意図せざるものかは別として、思いがけないチョンボも出てくることも少なくありません。
しかし、逆に言えば、チョンボする箇所は、ある程度集中しているのです。
その意味ではスモールにはスモールなりの独特の調査・分析手法=FAスキル・ノウハウが要求されるのです。
「鶏を割くになんぞ牛刀を用いん」(論語)と言いますが、鶏を割くには逆に鶏用の独自の道具=ノウハウが有効・有益なのです。

私達には、企業経営コンサルからスタートし、スモールM&Aについての独自のノウハウを蓄積し、且つ、それらを支える弁護士、税理士、社労士等の専門家集団とも各地で連携しております。
また、通常のスモールより更に小規模な場合は最低報酬価格の特別割引も用意しております。

転ばぬ先の杖、
(スモール)M&Aを検討されておられる方、是非、一度、お声をかけてください。

⇨ 「お問い合わせ」(本頁右上の"CONTACT"をクリック)画面 または yokotaeiji5963@gmail.com へ